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りーだー

1 名前:@@@ 投稿日:2001/10/20(土) 20:21
真っ白い病室。真っ白なベッドに、透き通るような白い顔があった。
長い髪が陽にあたってきらきらと輝いていた。しかし、目を閉じたその
顔には生気が感じられなかった。「飯田圭織」−−−ベッドのそばにかけ
られた名札の名前が、何だかとてつもなく異様な物に思えた。

______「圭織が倒れた?」メンバーが知らせを聞いたのは、二日
前。テレビ収録もプロモ撮影も、スケジュールがおした中での知らせ。
「過労だと思うんですが、、少し様子を見なくちゃいけないんで、飯田は
しばらく休みます。」マネージャーが言う。

知らせを聞いたなつみに一瞬こみあげた感情は、ちょっとした怒りだった。
(こんなに忙しいのに。1人でも抜けるといろいろスケジュール変わって
大変なんだから・・・)
 それは他のメンバーも同じだったかも知れない。正直、圭織が倒れるなんて
珍しいことではなかったのだ。少し体が弱いらしく、忙しい毎日が続くとよく
ふらっと倒れることがあった。また、いつものそれだろうと思っていた。

そのあと、なつみと圭はマネージャーに呼び出された。
「え・・・・?」
マネージャーが言うことが理解できず、二人は動揺した。
「圭織が、精神病ってことですか?」
圭がいう。その直接的な言葉にマネージャーは困惑の表情を見せた。
「精神病・・ってワケじゃないけど、ちょっとここんとこいそがしすぎるし、
新メンも増えて飯田けっこうしんどい時だから、疲れちゃったんだよ。
少し、まともじゃなくなってるんだけど・・すぐ元に戻るから。大丈夫
。だから、年長組、ちょっと飯田の分も頑張って。」

(まともじゃないってどういうこと?圭織はどうなったの?)
やっと、圭織がいつもの倒れかたではないということに気づいたなつみ
は、さきほどよぎった怒りを忘れて、不安、そして心配が心にめぐっていた。
 
「ねえ圭ちゃん、かおり、どうしちゃったんだろうね?」なつみは隣で
険しい表情をしている圭に聞く。
 「さあ・・ちょっとわかんないけど・・でもかおり、最近ほんといろいろ
疲れてたみたいだから・・・。」
いろいろ疲れてた。そうなのだ。中澤がいなくなり、新リーダーに就任してから
の圭織は、妙に頑張りすぎているようだった。リーダーということを意識してか、はしゃぎ
まわることもなくなったし、口数も減った。頑張って頑張って、頑張りすぎて、
息づまっているようにも見えた。『苦しい・・』どことなくそんな叫びが聞こえて
きそうな圭織だったが、年長メンバーとして自分達も大変だったから、助けてやることも
できなかった。重苦しい空気がまわりをとりめく。

「今度休みがあるときに、圭織の様子みにいこ。どうなってんのか見てみないと
わかんないって」そんな空気をとりはらうかの様に、少し明るい声で圭が言った。




106 名前:@@@ 投稿日:2002/03/09(土) 19:54
水面に映る、自分の姿。いつしかそれに吸い込まれるように、圭織は
水面を見つめ続けていた。

これは、ほんとうにあたしなの?

「あたし」     って  何

あたしは、あたし。  あたしは、圭織。
あたしは飯田圭織。


107 名前:@@@ 投稿日:2002/03/09(土) 20:05
いいだかおり、いいだかおり、いいだかおり、、、、
それがあたし?ほんとうにあたし?

「い、い、だ、か、お、り」
口に出して言ってみても、しっくりこない。
「いいだかおり」
「いいだかおり」

聞こえてくる音。それは自分が発したものだ。
自分の肩を抱きしめる。これはあたしの体。
あたしはここにいる、ここにいる、ここにいる・・・・・・


108 名前:@@@ 投稿日:2002/03/13(水) 18:47
「あたし」は、「あたし」の意識を取り戻した。
今は自分でも、あたしがおかしくなっていたことが理解できる。
だから、ここにいることも。

あたしの中にある、ぼんやりとした、それでいて心に染みるように
残っている記憶。あたしがまともな意識を取り戻すまでの記憶。


109 名前:@@@ 投稿日:2002/03/13(水) 19:01
みんなが、来てくれたのを覚えてる。
裕ちゃんが、あたしを抱きしめて泣いていた。
圭ちゃんの言葉も、ちゃんと覚えてる。あたしはそれに救われて、
辻を素直に受け止められた。

ちゃんとわかっている。もう、「あたし」は戻ってきた。
わかってる。そう、あたしはモーニング娘。なんだ・・・。



110 名前:名無し娘。 投稿日:2002/03/24(日) 20:54
 や〜素晴らしい作品ですね。
この作品を読んで、飯田さんが前よりも好きになったかも(照


111 名前:@@@ 投稿日:2002/03/26(火) 21:59
>110
にまにま(^^)


112 名前:@@@ 投稿日:2002/03/26(火) 22:14
すごく不思議な気分。ちょっと前までのあたしは、「あたし」だけど
「あたし」じゃなくて。まともな意識が戻った今、それを思うと、すごく
不思議。不思議っていうより、、奇妙。なんか、すごく、すごく、、、
怖い。。。。


だめ、やばい。

圭織は抱え込んだ自分の膝に、顔をうずめた。体が震える。
圭織は、「完治」にはまだ至っていなかった。
発作的に、以前の状態に戻ることがある。

普段は正常な意識であるために、その「発作」が圭織にとって非常な
恐怖だった。


113 名前:@@@ 投稿日:2002/03/26(火) 22:36
ゆっくりと息を吸って、ゆっくりと吐く。圭織は、「発作」が起こりそう
になるたびに、こうやって自分を落ち着かせようとしていた。
体の震えが収まる。急に全身の力が抜けて、圭織はへなへなと芝生に
座り込んだ。

やだなあ、もう、カオリ、どうしてこうなんだろう・・・・

自分が情けなくて、涙が滲んでくる。

入院なんて。モーニングの仕事は確かに超ハードだけど、みんな頑張って
こなしてるのに。リーダーだって、裕ちゃんならこんなことはなかった。

だめだなあ。。弱いなあ、あたしは・・。カオリは、、弱虫だなあ・・。
早く復帰しなきゃ。こんなに休んじゃって、みんなにいっぱい迷惑
かけてる。がんばらなきゃ。がんばらなきゃ。がんばれ、がんばれ、
がんばれ、がんばれカオリがんばれカオリ。



114 名前:@@@ 投稿日:2002/03/26(火) 22:45
・・・・・・違う、だめ、こんな風に自分をせきたてちゃだめ。
こうやって、まだがんばれるまだがんばれるってやってたから、カオリ
限界こえちゃったんだよ。圭ちゃん言ってたじゃない。あたしは一人
じゃないんだ。そう、甘えてもいいって、言ってくれたじゃない。

圭ちゃん。
頭ではわかってる。わかってるけど、どうしていいかわかんないよ。
あせっちゃうよ。圭ちゃん。みんな。
カオリは弱いです。もっと強くなれたらいいのにね。
強くなりたいよ。





誰か助けて。


115 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2002/03/28(木) 23:37
早く誰か助けてあげて。


116 名前:@@@ 投稿日:2002/03/31(日) 13:40
------------------------------------------------------------
圭織は、ベッドの上から窓の外を眺めていた。きれいな青空だ。
今日は気分が落ち着いていて、発作が起きる様子もなかった。

コンコン、とドアを叩く音がした。圭織が、「どうぞー」と言うと、
ゆっくりとドアが開いて、人影が見えた。

「カオリ」
「ご・・・・・っちん・・」
現れたのは、真希一人だった。真希は、微妙な笑顔を浮かべて
圭織に歩みよってくる。

「あ、どぞ、ここ座って」
圭織はベッドの脇の小さな椅子を指す。真希は手に持った紙袋を
下に置いて、椅子に座った。

「一人?」圭織が聞く。正直、メンバー内でもそれほど仲がいいわけ
でもない真希が、一人で見舞いにくるというのは驚きだった。

「うん」
真希は頷いた。

しばし沈黙が続く。圭織は何となく気まずくなって、真希に話しかける。

「あ、みんな、元気?」
「ん、元気だよ」
「ん、そか」

真希の方はいつもの調子で淡々としている。

「カオリは、調子どう?」
「あ、もう大分いいんだ。いっぱいみんなに迷惑かけちゃったし、
早く復帰しないとね」

真希が、ちらりと横にある小さな棚に目をやる。
そこには、ほとんど手のつけられていない圭織の朝食が置かれていた。


117 名前:@@@ 投稿日:2002/03/31(日) 13:49
「あ・・」
圭織は真希の視線の先に気づき、苦笑いを浮かべた。

「カオ、食べてないの?」

「え、や、なんか今日食欲なくて」

「今日だけ?」
真希が、圭織の手首を握った。それは、とても細い。
「や、あの」

「病院食はおいしくなくってさぁ」
圭織がへらっと笑って言うと、真希は急に大きな声をあげた。
「そう思ってさぁー」
さっき下に置いた紙袋を持ちあげる。

真希が持ってきた紙袋の中身は、プリンだった。
「買ってきたの。これおいしいよっ」


118 名前:@@@ 投稿日:2002/03/31(日) 13:55
「食べる?カオリ。まだ冷たいよぉ」
圭織の返事を待たず、真希はプリンを取り出して、付属の小さなスプーン
の入った袋を破く。

自分を喜ばせようとしている真希の姿がかわいくて、圭織はとても嬉しく
なった。実際食欲はなかったのだが、笑顔を浮かべて、
「食べるっ。カオリ、ここのプリン大好き!」

圭織の明るい声に、真希もにっこりと笑顔で答える。
「へへ、あーん」
真希がプリンをスプーンですくって、圭織の口元に近づける。





119 名前:@@@ 投稿日:2002/03/31(日) 14:03
圭織はそれをぱくっと口に含んで、もぐもぐと味わった。
プリンはとてもおいしかった。ほとんど食欲のなかった自分の体が、
食べ物というものを思い出した感じがした。

「おいしい・・・・・」
圭織がいうと、真希は嬉しそうに、
「もっと食べて」
と、スプーンにプリンをのせて圭織に差し出す。

なんだろう、ごっちんが、めちゃくちゃ優しい。

真希にプリンを食べさせてもらって、圭織は胸のあたりがほかほか
と温かくなっていくのを感じた。

嬉しいなあ・・・・。


120 名前:ななし。。。 投稿日:2002/04/02(火) 01:43
最近、後藤も飯田位に髪を伸ばしてるから、
MUSIXなんかで2人がスーツ着て並ぶとちょっと姉妹っぽく見える時があるんだよね。
俺的には2人とも好きなんで、この組み合わせは嬉しい。
今夜始まった「美少女教育2」でも一緒に出ていたし。


121 名前:@@@ 投稿日:2002/04/02(火) 21:31
へい、ごまかお大好きです


122 名前:名無し娘。 投稿日:2002/04/02(火) 21:39
 ごまかおイイっすねぇ。
この二人といしよしを加えて、娘。ビジュアル最強ユニットを見てみたい


123 名前:@@@ 投稿日:2002/04/03(水) 10:57
なる・・・


124 名前:@@@ 投稿日:2002/04/03(水) 11:19
「ごっちんも食べなよ、好きでしょ?」
「いーの、あたしはカオリに食べてもらいたいの」
真希は、次々と圭織の口にプリンを運ぶ。

「カオリこんないっぱい食べれないよお」
「まだちょっとしか食べてないじゃ〜ん」
「もうっ」

圭織は、そんな真希の手からスプーンとプリンを取り上げた。
「ほら、ごっちん、あ〜ん」
真希の真似をして、プリンを食べさせようとする。
「カオリが全部食べてよぉっ」
真希がまた、プリンを取り返そうとする。

笑いながらそんなことをしている二人は、じゃれあっているように見えた。



125 名前:@@@ 投稿日:2002/04/03(水) 11:26





真希が、圭織を抱きすくめていた。

二人が食べさせあって、もう中身がちょっとしか残っていないプリンの
容器とスプーンが、音も立てずにシーツの上に転がり落ちた。


126 名前:@@@ 投稿日:2002/04/03(水) 11:34
真希は、圭織をぎゅっと抱きしめる。
圭織の顔が、真希の胸に押し付けられた。

いきなりのことで、声も出なかった。真希も、何も言わなかった。
窓の外から、風の音が聞こえる。

自分の顔を、圭織の頭に擦り付ける真希。

「・・・ごとー、泣いてる・・・・・?」



127 名前:@@@ 投稿日:2002/04/03(水) 11:52
圭織を抱きしめる真希の体が、小さく震えているような気がした。
聞こえる真希の胸の鼓動が、早く感じられた。

「・・・・泣いてないよ」
頭上から聞こえる真希の声は、僅かにかすれていた。
「ごとー・・・・、ごっちん・・・・・?」

真希の手が、圭織の背中を撫でさする。
「細いね、カオリ」
「・・・・・・・」

「カオリ、吐いてるでしょ」

---------何でこんなに勘がいいんだろう。



128 名前:@@@ 投稿日:2002/04/03(水) 11:59
「カオリごめん、ごめんカオリ、ごめん」
どんどん潤んでいく真希の声。

圭織は自分の腕を真希の背中にまわした。
「ごっちん・・・・・・・?」


「泣いてないよ・・・・・・・・・」
喉から搾り出したような涙声。
「わけわかんないよぉ・・・・・」

ごっちんの胸があったかくって、何だかあたしも泣きたくなった。



129 名前:@@@ 投稿日:2002/04/04(木) 12:08
顔を上げる。 
ごっちんの、涙で濡れた顔が、目の前にあった。

「なんで泣くのよぉ・・」

「ごとー、自己中だから、いっぱいカオリに迷惑かけてたよね」

「もっとちゃんと、いろいろ考えて、年下のメンバーの面倒とか、
見るべきだったよね」

「ごっちん」

「ごめんねカオリ、カオリ、つらかった?しんどい?カオリ、ごめん」



130 名前:@@@ 投稿日:2002/04/04(木) 12:12
ごっちんは、ぽろぽろ涙を流しながら、次々と喋った。
こんなごっちん見るの、初めてだった。

ごっちんは何度もカオリを抱きしめながら、いっぱい、「ごめん」って
言った。



131 名前:@@@ 投稿日:2002/04/04(木) 12:18
「ちがうよぉ・・・・ごっちんのせいじゃないよぉ・・・」

胸が、じゅんと熱くなった。

ごっちんの感触。ごっちんの匂い。こんなに、あったかかったなんて
知らなかった。ごっちんの涙はすごく綺麗で、あたしまで泣けてしまった。









132 名前:@@@ 投稿日:2002/04/04(木) 12:26
「カオが・・・こんなんだから」
圭織の涙に、真希はハッとした表情を浮かべた。

「カオリが弱いから、リーダーつとまんなくて、こんなんで倒れちゃって」
真希が、小さく首を振る。

「カオリ、皆のことは大好きなの」
圭織の涙は止まらなかった。

「でも、何かね、何か、ついてけなくて」



133 名前:@@@ 投稿日:2002/04/04(木) 12:30
「いっぱい・・・変わっちゃって・・・」

「明日香とか、、彩っぺとか、、いたときの、、、」

「いたときの頃には、、、、、、、、」





「戻れないんだょね・・・・・・・・・・・・・・・」


134 名前:@@@ 投稿日:2002/04/04(木) 12:39
そのまま圭織は、しくしくと泣き出してしまった。

真希は、黙って圭織を抱いていた。
やがて、圭織の長い髪を撫でながら、言った。

「あたしは、途中っから入ってきたからさ」
「最初の頃の、皆の苦しさとか、嬉しかったこととか、わかれない」

「ほんとは、わかりたい」

すん、すん、と泣きながら、圭織は真希の言葉を聞いていた。

「わかんなくて、つらいと思う」





135 名前:@@@ 投稿日:2002/04/04(木) 12:48
「ごとー、人の相談とかのるの、得意じゃないし」

真希は両手で圭織の顔を包んで、自分の方に向けた。

「・・・・・でも、カオリが一人で悩んでるのはつらいよ・・・」


ごっちんの言葉を聞いてて、何かがカオリの中でふっきれた気がした。
今まで、心の中にたまってた、悲しいこととか、全部、どぉって、
涙といっしょに溢れ出てきた。


136 名前:@@@ 投稿日:2002/04/04(木) 13:25
「つらかったよぉ、モーニング、どんどん変わってっちゃうし、カオリ
ついてけなくて、怖くなって、頭ん中ごっちゃのまんまで仕事は増えて
いくし、一緒にいたメンバーも次々やめてっちゃって、とまどってたのに
リーダーになっちゃうし、すごいプレッシャーで、そんであたし自身も
変わっちゃって、どうしていいのかわかんなくて、もう、もう、」

自分でも、何言ってるかわかんなくなってたけど、
ごっちんは、うんうんって頷きながら、受け止めてくれた。

カオリはそのままうわーって、子供みたいに、ごっちんの胸で泣いた。


137 名前:@@@ 投稿日:2002/04/04(木) 13:33
いっぱい泣いて、その分、すっきりした。心の中でずっともやもやしてた
ものが、消えていく。

考えてみれば、カオリの心の苦しみは、モーニングのメンバーである
皆のおかげでどんどん癒されていってる。カオリは、モーニングのこと
でいろいろ苦しんで、倒れちゃったのに、そのモーニングのみんなに
助けられてる。

もっと早く気づいてれば良かった。カオリ、一人じゃなかったのに。


138 名前:@@@ 投稿日:2002/04/04(木) 13:44
「ありがとね、ごっちん」

圭織がそう言ったのは、二人とも泣きつかれて、ぼんやりとしている
時だった。

「てか、ごとー、何もしてないけどね」
真希がふっと笑って言う。

「ううん、何か、すっごいすっきりした」
「そか」


「カオリ、ごっちん好きだわ」
圭織が言うと、真希はちょっとはにかんで、
「ごとー、カオリ好きだわ」
と言った。




139 名前:@@@ 投稿日:2002/04/04(木) 14:18
----------------------------------------------------------------------
「そんなの、やだっ!!!」
凍りついた空気を、希美の高い声がやぶった。

「いーださんがやめちゃうなんて、ぜっったいにやだぁっ!!!!」
希美の小さなこぶしはぶるぶると震えていて、瞳は涙で潤んでいた。

「うそでしょ?ねえ、うそだよね?」
中澤にすがりつく希美を、ほかのメンバーは呆然と見つめていた。

「決定ってわけじゃないんや」
中澤は、希美の手を取って言った。

「ただ、カオリが復帰したとして、このままモーニングにおることが、ほんとに
カオリにとって一番ええことなんかなって。カオリだけじゃなくて、うちらに
とっても。」

「そんなの、それが一番いいに決まってますよ!」
梨華が言う。
「そうだよ」「そうだよ」
他のメンバーも、次々と言った。

「ほんまにそうか?カオリは、モーニングが原因で倒れたんやで。確かに、今
どんどん回復していっとるとはいえ、モーニングに戻って、また苦しむことに
なるんとちゃうか?」

「そんなことないよ、もうカオリは大丈夫だよ」
真希が言う。



140 名前:@@@ 投稿日:2002/04/04(木) 14:30
「ん・・・・・でもな」
中澤は、しんみりとした表情で言った。
「モーニング娘。が成長するんとともに、カオリも成長したんや。今の
カオリは、モーニングていう鞘ん中に収まっとかんでもええんと違うか。
カオリは、今、そういう転機なんやないか」

「でも、でもいいださんは歌が好きだもん!」
希美は必死だった。

「何も歌をやめるとは言ってないで。モーニングを卒業して、ソロとして、
歌うたったり、絵とか、詩とかやったり。一人の飯田圭織として、カオリ
のペースでやっていくことができるんやで」

「・・・・・・・ゃだあっ、いやだ、いいださんがやめちゃうなんて、
つじが、つじが寂しいんですよぉ・・・・」
「辻」
泣き出した希美を、なつみが引き寄せて、なだめる。



141 名前:@@@ 投稿日:2002/04/04(木) 14:36
「あたしは、この話聞いて、それで、カオリが自分のペースでやってける
ならええと思う。実際そう希望するファンも増えとるんや」


「・・・・それで、カオリは・・・・?」
今まで厳しい表情で黙りこくっていた圭が言った。

「昨日、マネージャーが話しに言った。カオリは、考えさせてください、
て言うたんやって」

「やだ、やだ、いいださん、何で断ってくんないのぉ、いやだぁ・・」

「辻、カオリも、いろいろ考えとるんや。わかってやってくれ」

希美は、ずっと泣いていた。



142 名前:@@@ 投稿日:2002/04/06(土) 18:58
------------------------------------------------------------
家のドアを開ける。真っ暗な部屋。
なつみは、電気もつけずにソファに転がりこんだ。

「カオリ・・・・・・」

今日の中澤の話は、なつみに大きな衝撃を与えた。
今まで一緒にやってきたメンバーが、やめると言う話を聞いたとき、
いつもこんな衝撃に襲われる。

しかし今回のは、本当に、目の前が真っ暗になったような気分だ。

(カオリが、モー娘。をやめるかもしれない・・・)



143 名前:@@@ 投稿日:2002/04/06(土) 19:09
クッションに顔をうずめる。

カオリの顔ってどんなだったっけ。
カオリの声ってどんなだったっけ。
カオリの長い髪・・・・大きな目・・・・
カオリがいなくなるなんて信じられない。

ずっと一緒だった。一番最初のオーディションの時から、ずっと。
いろんな思い出がありすぎる。
あたしのカオリに対する想いは、いろいろとありすぎる。

初めてカオリに出会った時。カオリはすっごい美少女で、スタイルも
良くて、ほっそりしてて。合宿の時、おんなじ北海道出身で、年も
おんなじだったから、すぐに仲良くなった。そう、うちらは誕生日
だって二日違いで、びっくりしたのを覚えてる。

それからはずっと一緒にいた。好き、楽しい、ムカつく、嫌い、
カオリにはいろんな感情を覚えた。



144 名前:@@@ 投稿日:2002/04/06(土) 19:17
弱いカオリ、強いカオリ、たくさん知ってる。
 
あたしは、カオリが卒業するって話、進んで賛成することはできない。
でも。
頭の奥では、それが一番いいことなんだって、思ってるのかも。
カオリにとって、娘。にとって。
今のカオリっていう人間が、今のモーニングの中では表現しきれない
のかもしれない。

カオリは、マネージャーの話を聞いて、何を思っただろう。
今、何考えてるだろう。


145 名前:@@@ 投稿日:2002/04/22(月) 20:35
写真集待ち


146 名前:名無し娘。 投稿日:2002/04/23(火) 16:28
続きは写真集出てからって事ですか?
楽しみにしてます。


147 名前:@@@ 投稿日:2002/04/23(火) 19:45
ぃゃそういうわけでもなんだべけど・・
頭が働かなくて・・
写真集楽しみです。トロトロですみません。ちゃんと更新します。


148 名前:名無し娘。 投稿日:2002/05/03(金) 14:39
写真集、最高に綺麗でしたね。作者様もこれ見てかおりんからパワーもらって頑張ってください。


149 名前:@@@ 投稿日:2002/05/06(月) 16:40
綺麗でした。。。。。。。。感激。。。。。。。
頑張ります。ありがとございます


150 名前:@@@ 投稿日:2002/05/06(月) 17:11
------------------------------------------------------------


きたか。。。。。。とうとう。。。。。

もうすっかり慣れた病室のベッドの上で、圭織はじっと考えていた。
昨日の夜はほとんど眠れなかった。眠れるような気分じゃなかったのだ。

「なんとなく覚悟はしてたけど・・・・・さ」

出された朝食も、胸がいっぱいで食べられなかった。

昨日、マネージャーがやって来た。

マネージャーの話の内容を聞いても、驚くことはなかった。
ただ、薄々思っていたことが、ついにやって来た、という、身を
貫かれるような感覚だった。




151 名前:@@@ 投稿日:2002/05/12(日) 11:39
『飯田もそろそろモーニングの枠から抜けて・・・・・・・・』

『飯田個人でやったら・・・・・・・』
 
マネージャーの言葉が頭の中で、何度も何度もこだまする。

「考えさせてください」
それしか言えなかったあたし。何を考えるって言うの。
わかってる。これはもう既に決定なんだ。あたしはモーニングを
卒業する。卒業しなくちゃいけないんだ。

ねえ。カオリ、もう終わりなのかな。


152 名前:@@@ 投稿日:2002/05/12(日) 12:53

圭織は相当深く考え込んでいて、すぐ側に立っていた人影に、長いこと気づかなかった。

ふと、人の気配を感じて顔をあげると、そこには見慣れた顔があった。
「ふぁ、なっち!」
驚く圭織とは逆に、なつみは怒ったような表情で立ち尽くしていた。

「いつからいたの?声かけてくれたらよかったのに・・・あ、もしかしてかけてくれてた?
ごめんカオリぼーっとしてて・・・・」







「なっち?」


153 名前:名無し娘。 投稿日:2002/05/12(日) 13:14
なつみは少しも動かずに、ただ圭織を見つめていた。
その視線に、何となく察しがついた圭織は、なつみから目をそらして、
言った。

「聞いたんだ。あの・・・・・・そつぎょ、卒業の話・・」
卒業という言葉を口に出すことが、何となくひっかかった。

「聞いたよ」
やっとなつみが口を開いた。
「誰から・・・・・?」
「祐ちゃん」
「みんな、聞いたの?」
「うん」
「そっか・・・・・・・」

目を合わせないままの会話は、どことなく宙をさまよってるかのようだ。

「泣いてたよ」
「え?」
「辻」



「・・・何か言ってた・・?」

「カオリがやめるなんていやだって。寂しいって」




154 名前:@@@ 投稿日:2002/05/12(日) 13:27
辻。カオのことを慕ってくれた辻。ソフトクリームを持ってた辻。
そうか、泣いてたか。辻は、泣き虫なんだから。

「なっち、髪、のびたね」
辻も少しは大きくなっただろうか。みんな今何してんだろ。そういや、
この前会ったごっちんはあんまり変わってなかったなあ。

ああ、カオリはこの長いお休みの間、随分といろんなことに気づいたり、
救われたりしたけど、その間にも、あっちの世界は目まぐるしく動いて
いただろう。時が流れた分、カオリが気づいてなくても、確実に何かが
動いていくんだ。





155 名前:@@@ 投稿日:2002/05/12(日) 13:45
「カオリ、どうするつもりなの?」


--------そして今、なっちがあたしに問う。辻が泣いた。カオリも
泣いたよ。みんなが卒業するとき。

「どうするっ・・・・て、、いきなり言われてもさ」

ゆっくりと、確実に、道が作られている。この道は、あたしが自ら
作っているものではないと思うけど。でも後戻りできないんだ。
この道は、卒業に向かっている道。


156 名前:@@@ 投稿日:2002/05/12(日) 15:32
なつみが、隣に座った。

「カオリはね」
圭織は窓の外に目をやりながら話した。

「カオリは、卒業しなきゃいけないんだろうね・・」
「カオリ・・・・・・・・・」

「こんなに休んじゃって、みんなにいろいろ迷惑かけたし」
「カオリ、それは・・・・」

「どっちにしてもさ、カオリはもう、そういう時期なんだよ」
何だろう、自分の言葉が、自分の心に染み込んでいくようで。妙に切ないな。





157 名前:@@@ 投稿日:2002/05/12(日) 15:47
きっとなつみも同じような気分になっているのだろう。きゅっと唇を
噛み締めている。

圭織の頭の中に、「卒業」していったメンバーの顔が浮かんだ。
「今まで卒業してった皆はさぁ、、それぞれ、自分で何かを決意してさ、
卒業してったんだよね。」

「みんな・・・・なんか自分のそういう時期をさ・・・感じて・・・」

なっちが喋らないから、カオリの一人語りみたいじゃん。
まあ、でも今はそういう気分だし・・。下手な言葉で邪魔されたくない。
なっちはわかってんのかな。さすがなっちだな。


「カオリも、早く、気づいておくべきだったなぁ。こんな風になる前に。」




158 名前:@@@ 投稿日:2002/05/12(日) 15:55
あ、でも、こんな風になって、改めてカオリはみんなに支えられてる
ってことに気づいたんだよね。まあ逆に言うとこんな風になるまで気づかなかった
んだけどさ。いっつも一人で抱えこんで、悩んじゃってさぁ。

「カオリ、皆のこと大好きだよ。ほんとに。だから皆と別れんのは
寂しいけどね、やっぱ、出会いがあれば必ず別れはくるし、始まり
があれば終わりもあるんだよね。そう、今、カオリ、終わらせなきゃ
いけないんだよね」

終わらないものなんて、ない。カオリは今終わりを迎えようとしてる。



159 名前:@@@ 投稿日:2002/05/12(日) 16:10


「終わりなんてないよ」
その声は、小さかったけれど、力強い響きだった。
 
圭織は、ちょっとどきんとして、なつみのほうを振り返った。
なつみの光を持った瞳が、圭織の視界に飛び込んでくる。

「カオリ、終わりじゃない、終わりなんてないの。終わりは始まりなの。」

なつみの瞳から目をそらせなくて、カオリはじっとしていた。

「明日香だって彩っぺだって、さやかだって裕ちゃんだって、何も
終わりを感じて卒業したわけじゃない。終わらせたくて卒業したわけじゃない。
次のスタートを切る決意をして、卒業したんだよ。」

「なっち・・・・・」

「カオリだって、終わりなんかじゃない。今、次のスタートを切るための
転機なんだよ」




160 名前:@@@ 投稿日:2002/05/12(日) 16:21
次のスタートへの、転機。だったら。

「だったら・・・・カオリに次のスタートなんてあるの・・?
カオリに確実な未来なんて無いじゃない」
拳に力が入る。

「確実な未来なんて誰にもないよ。自分で作っていくんだよ」

なっちが、眩しい。

「思い出してよ。うちらが愛の種の手売りしてたときに、確実な未来
なんてなかったよ。でも、頑張ったじゃない」

そう、あの頃は、あの頃は、確かなものなんてなくても、未来を信じ
てた。いや、未来を手に入れるために、がむしゃらに頑張ってた。
ぶつかり合っても、傷ついても、立ち上がって、歩いてきた。



161 名前:@@@ 投稿日:2002/05/12(日) 16:27
あの頃は、今のモーニングみたいな立場に憧れて、眩しくて。
でも今は、あの頃のあたし達が、眩しい。






----------------------どうしてそんなに、あの頃と同じ瞳をしているの?
----------------------カオリもあの頃、そんな瞳をしていたの?

ねえなっち。


162 名前:@@@ 投稿日:2002/05/12(日) 20:46
「カオリとは、最初っからずっと一緒に頑張ってきたよね」

うん。ずっと一緒だったね。カオリにとって、一番近い存在だった。
ライバルで、友達で、家族で。

「カオリは、あたしと出会ったこと、運命だって」
「あたしのこと、かけがえのない人だって」

うん。

「言ってくれたよね?」

なっちは、笑顔で言った。カオリは、なっちのその笑顔が羨ましかった。
愛くるしくって魅力的で、みんながなっちのことをかわいいって言ったね。
カオリは、怖い顔とか、いっつも怒ってるとか言われてたから、なっちが
そう言われるたびに、羨ましくて。なっちはステージの上でも、中心
に立って歌ってたね。カオリは、羨ましくて。悔しくて。


163 名前:@@@ 投稿日:2002/05/12(日) 20:51
喧嘩もいっぱいあった。ぎくしゃくしてた時もあった。
だけど。

かけがえのない人だ。苦しいときも嬉しいときも、一緒だった人だ。
運命の人だ。それは信じてる。

「いろんなことが、変わっていくけどね」

うん。

「変わらないものもあるんだよ」

・・・・・・・・

「なっちにとっても、カオリはかけがえの無い存在だよ。なっちは
カオリをいつまでも大切に思ってる。それはずっと変わらないよ」

・・・・・・・・

「ずーっと、ずーっとだよぉ」

・・・・・・・・


164 名前:@@@ 投稿日:2002/05/12(日) 20:55
圭織は俯いた。




___________神様。信じてもいいですか。

終わらないものがあると。永遠があると。

未来があると。光があると。

信じてもいいですか。あの頃のように。

かみさま。


165 名前:@@@ 投稿日:2002/05/13(月) 19:25
-----------------------------------------------------------
病室から出たとたん、なつみはその場に崩れた。
ぽたっ、ぽたっ、と、瞳から落ちる雫が廊下を濡らす。

出会った頃からの圭織の姿が走馬灯のように駆け巡っていく。

とうとう、この時がきたんだね。
今までいろんなことがあったね。
えらそうなこと言ってごめんね。あんなこと言えるほど、ほんとは
なっちは強くない。今だってほら、こんなに、涙が。

カオリは言ったんだ。昔と変わらない笑顔で。


『次のスタートを切ることにするよ』


166 名前:@@@ 投稿日:2002/05/13(月) 19:28
頑張れカオリ。はばたいてけ。なっちはもう少し、ここで頑張ってみるよ。



167 名前:名無し娘。 投稿日:2002/05/14(火) 10:58
おわっ…ちゃうの?
飯田も安倍も頑張れ、そんで作者さんも頑張れっ。


168 名前:@@@ 投稿日:2002/05/14(火) 20:11
>名無し娘。さん
何だかクライマックスもなにもない話ですが・・・。
そろそろ、終わりに近づいてます。
応援してくれてほんとにありがとうございます。
皆さんの応援レスが無かったらほんと放置になってたと思う。。



169 名前:名無し娘。 投稿日:2002/05/14(火) 23:13
初カキコします。読んでますよ。頑張ってください。


170 名前:名無し娘。 投稿日:2002/05/17(金) 17:36
大量更新に乗り遅れてしまった----!
ほんとイイです。
みんなに明るい未来をお願いします!!


171 名前:@@@ 投稿日:2002/05/17(金) 20:03
なんか妙なペースで進んでってしまって・・。
自分でも読み返してみてわけわからんくなってるんですが。
もうすぐ、ラストなんで、最後まで頑張りますね。
ほんとにありがとうございます


172 名前:@@@ 投稿日:2002/05/19(日) 19:35
目が覚めると、空気が湿っぽい。ざぁざぁと雨の降る音がしていた。

雨か・・・・・。

あたしは、雨の日が嫌い。心の中まで暗くさせてしまうから。


不安定な精神状態、それからくる体の不調もやっと落ち着き、
あたしは今日、この病院を退院する。ほんとはもっと早く退院できても
良かったんじゃないかと思うんだけど、こんなに長く病院に入れられて
いたのは、そっちのほうが都合が良かったからかも知れないな。

圭織はふっと笑って、鏡に映る自分を覗いた。

顔色、だいぶよくなった。吐いたり、発作に襲われたりしたせいで、
ちょっと痩せちゃったけど。髪の毛がのびて、染める前の黒い髪に
戻ってきている。今日、美容院行って、髪の毛ちゃんとしてこないと。
だって明日、久しぶりにテレビに出るんだから。



173 名前:@@@ 投稿日:2002/05/19(日) 19:46
そう、明日は、あたしの復帰会見。
そしてあたしの、卒業会見。

ラストコンサートはやらない。体力的にも、都合的にも、無理があるしね。
だから、明日が、あたしのモーニング娘。としての最後の仕事。
・・こんな形で卒業することになって、ファンの人にも、メンバーにも、
皆に悪いと思ってる。あたしの卒業が決定してから、メンバーの皆に
まだ会ってないし。ああ、皆ごめんね。

マネージャーが迎えに来る。荷物をまとめておかなくちゃ。




174 名前:@@@ 投稿日:2002/05/19(日) 19:56
昼近くなって、圭織が身支度を整え荷物もすべてまとめてしまうと、
ドアをノックする音が聞こえた。

マネージャーが迎えに来たんだ。

「どうぞ」
圭織が言っても、ドアが開く気配がない。


不思議に思って、圭織がドアに近づいていくと、ドアが急にかちゃりと
開いた。


「いいださん・・・・・・・・・・・・・・!!!!」

ドアの外から、急に抱きつかれた。
懐かしいその感覚に、思わず涙がこみあげてきそうになった。

「つじ・・・・・・・・・・・」

病室に飛び込んできた辻希美は、圭織の身体をしっかりと抱きしめ、
顔を押し付けて泣いていた。



175 名前:@@@ 投稿日:2002/05/19(日) 20:07
「いいださん、いいださん、いいださん、、、」

「辻、来てくれたんだ。ありがとうね」
少し大きくなった希美の頭を撫でながら、ドアのほうを見やる。

「みんな・・・・・・!」
そこには、メンバーの皆が揃って立っていた。

「カオリ」
「飯田さん」
「カオリ」

みんな、涙を流していた。哀しい顔、やさしい顔、温かな顔をして、
それぞれが圭織を取り囲んだ。

「みんな・・・・・裕ちゃんも・・・・・来てくれたんだ・・・・・」

久しぶりの皆の顔。やっぱりみんな、髪が伸びたり、髪の色が変わったり、
変わっている。でも、圭織を見つめる瞳は、変わっていなかった。

「カオリぃ」
矢口が、涙でくしゃくしゃの顔をして抱きついてくる。
そしたらみんな次々にカオリに抱きついてきた。

皆の温かい体温が、圭織に伝わってくる。

ああ、あたしの仲間。



176 名前:@@@ 投稿日:2002/05/19(日) 20:21
圭織はみんなを抱き返したあと、ちょっと離れて、みんなに向き合った。

「みんな、こんな風に卒業することになってごめんね。えっと、いっぱい
迷惑かけてごめんなさい。最後まで頼りないリーダーで、ごめんね。」

「もう、ごめんねなんて言わないでよぉ・・・っ」
圭織の言葉に、真里が首を振りながら言った。

「わた、私たちだってもっと、飯田さんの助けに、なってあげられてれば・・」

「石川・・・。」

「加護だって、飯田さんにいっぱい迷惑かけてごめんなさい」

そうやって石川や加護が泣くから、みんなが口々に「ごめん」「ごめん」
と言って泣いてしまった。




177 名前:名無し娘。 投稿日:2002/05/21(火) 15:07
ひょんなことからここを見つけました とてもよいです(少し泣きました)
作者様 頑張ってください 最後まで読みます 


178 名前:@@@ 投稿日:2002/05/21(火) 19:54
ひょんなことから見つけてもらって嬉しいです

ご期待に添えるかどうかわかりませんが良かったら付き合ってやって
ください(^^)


179 名前:@@@ 投稿日:2002/05/21(火) 20:08
この涙は、みんながあたしのために流してくれてる涙で。
なんてあったかいんだろう。この温かさに、もっと早く気づいてれば
良かった。あんな風に、一人で思いつめる前に。

ぐっときてしまって、思わずよろけそうになったあたしを、圭ちゃんが
優しく抱きとめてくれた。

あたしはそのまま、圭ちゃんに身体を預けた。
周りには、まだみんながまとわっていて。

あたしはこうやって皆に支えられていたんだ。




180 名前:@@@ 投稿日:2002/05/21(火) 20:23
「ぁのね・・・・・・」

圭織は、圭の肩に顔をうずめたまま、小さな声で言った。

「カオリ、弱いんだ、すごく」


「でも、それ、認めないように、頑張ろう頑張ろうってしてた」
圭が、ぽんぽんと圭織の頭を撫でる。
真希は涙が零れないように上を向いて、圭織の言葉を聞いていた。

「だけどさあ、違うんだよね、、弱い分、皆で支えあっていけば
いいんだよね、何も、一人だけで、頑張ってくこと、ないんだよね。
そのこと、カオリ、ちゃんとわかってなかったのかも。」

圭織は、顔を上げて、へへっと笑って言った。
「今更気づくのも、おかしいんだけどさっ」
その顔は、涙で濡れていた。






181 名前:@@@ 投稿日:2002/05/21(火) 20:34
その顔を見て、皆、笑ったり、泣いたり。

「いや、みんな全体の問題やなあ。そういう、皆で支えあっていける
環境を作れなかったんやからなあ」

ちょっと後ろで、みんなを包み込むようにして立っていた中澤が言った。

「でも、これからは、ね」
ひとみが言うと、みんながこくんと頷いた。



「・・・・・・・・・・・・・・・みんなで、ささえあっていけるようにしますから、
だから、だから、・・・・・安心してください、いいださん」

ずっとカオリに抱きついて泣いていた辻が、やっぱり泣きながらそう
言ったとき、カオリは思わず辻をぎゅっと抱きしめていた。

「あんたがそういう風に言えるなんて、成長したなぁ辻ぃ」
カオリが泣き笑いの顔で何度も辻を抱きしめると、辻は声をあげて
泣き出してしまった。頑張れ辻。あたしはあんたをずっと見守ってる。
だから。

「カオリも、頑張る。だからみんな、見てて」





182 名前:@@@ 投稿日:2002/05/21(火) 20:43
カオリは、これから、新しい世界に向かって歩き出すことにしました。
そこには何が待ち受けているかわからないけれど、頑張るから、見ていて
ください。カオリを、愛していてください。それだけでカオリは、きっと
強くなれるんだ。

圭織の瞳は、まっすぐな光を燈していた。どれくらいぶりかわからない、
まっすぐな、まっすぐな光を。



183 名前:@@@ 投稿日:2002/05/21(火) 20:57
そんな圭織の瞳を、みんな見とれるように見ていた。

「何か歌おうか、カオ」
いつも盛り上げ役の真里。

「卒業式みたいだなあ」
「卒業式、だよ」

「何歌う?」





「・・・・・・・・愛の種、歌おうかカオ」
なつみが、圭織の目の前に立って言った。
それを聞いて、真里もみんなも黙ってしまった。

「愛の種・・・・・歌おうよ」





184 名前:@@@ 投稿日:2002/05/21(火) 21:03
中澤が、なつみと圭織の手を引いた。
みんな、周りを取り囲んだ。

「歌お、カオ・・・うちらの、歌だよ」
----愛の種。あたしたちの、スタート地点。あんまりに、思い出が
つまりすぎている歌。

「いいださん、つじも、歌いたいです」

涙が、笑顔が、計り知れないほどの思い出がつまった歌。

「・・・ごめん、辻。この歌は、特別なんだ」
圭織の言葉に、希美はちょっと寂しそうな顔をして、頷いた。

大切な歌なの。この歌があるから、今のカオリがいるの。
あたしたちがいるの。モーニング娘。が。



185 名前:名無し娘。 投稿日:2002/05/22(水) 09:26
更新お疲れ様です。ずっと読ませていただいていました。
毎回、つい涙目になっちゃいます。
いよいよラストに進んでいくのですね。終わってしまうのは寂しいですが、
飯田さんや仲間たちにとって希望に満ちた幸せなラストであれば納得です。
ラストまで頑張ってください。


186 名前:@@@ 投稿日:2002/05/22(水) 17:47
感謝です。。。。。。。。


187 名前:@@@ 投稿日:2002/05/22(水) 17:56

  「さぁ出かけよう」

圭織となつみの手をぎゅっと握って、中澤が歌いかけた。

  「きっと届くから」

そしてなつみも。


     「・・・髪を切って、夢をみがく」

圭織も、口を開いた。

     『好きな空を目指すために』

3人の姿を、皆、取り囲むようにして見ていた。真里が、圭に寄りかかって
泣いている。圭の瞳からも、涙が次々と溢れていて。本当は、この3人の
輪に入りたい。でも、この歌は、3人と、ここにはいない二人の歌。その
5人の結晶なのだ。




188 名前:@@@ 投稿日:2002/05/22(水) 18:00
    ねえ風にのり  もっと輝いて
    愛の種をまきちらしたい

    いつのまに  涙はかわいた
    何かを残して

    何度でも笑顔になれるよ
    地球が 回るから

    予感を超え
    始まるから
    新しい季節は
    少しいぢわる

    指先に  思い出をつめて
    マニキュア塗るから


189 名前:@@@ 投稿日:2002/05/22(水) 18:06

    ほら 気づいてよ
    うんと 光る街
    靴を選び かけ出したら
    不安はもう、解けてるから

    もし迷っても そう進もうよ
    自分の道 さぐりだすから

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・
    


190 名前:@@@ 投稿日:2002/05/22(水) 18:34
「こわれそうな」
「瞳の中」
「ふるわせてた想い」

・・・・・・・・・・
なつみと中澤の声だけが、響いていた。
外に降る雨は、やわらかな音を立てていた。

圭織はうずくまって肩を震わせていた。


---------今日がお天気じゃなくって良かったと思うんだ。
今だって、こんなに胸がいっぱいで、立ってもいられないくらいだから。
青空の下でこの歌をうたうなんて、あんまりにも。

この歌を、5万人の人に手売りできたら、モーニング娘。になれて。
あたしたちは、夢を手にするために、がんばって、がんばって。
そしてやっと、あたしたちのデビューが決定した時、青い青い空の
下で、あたしたちのために来てくれたみんなの前で、この歌を歌ったん
だよ。


嬉しかったよね。
あんなに最高だったことないよね。


どうしてこんなに、あのときの青空が、胸に広がってくるの。
あのときのお客さんの姿が浮かんでくるの。

なっちと、祐ちゃんと、明日香と、彩っぺと、カオリで、みんなで
歌った、あの日のことが、鮮やかにカオリを満たしていくの。



191 名前:@@@ 投稿日:2002/05/22(水) 18:42
あのとき、あの青空の下で、これからずっと5人で道を切り開いて
行くんだって、期待と不安と喜びでいっぱいになってたんだ。

ねえ、あの5人が、こぉんなおっきなグループになっちゃうなんて、
あの時誰が想像できた?
どんな風になっても、どんなに時が経っても、これが、あたしたちの。


「これがあたしたちの原点だからね」
なつみが、みんなのほうをまっすぐ見て言った。
みんな、大きく頷いた。

なっちの言葉が嬉しくて、カオリもみんなのほうを見て、頷いた。

 




192 名前:@@@ 投稿日:2002/05/22(水) 18:47
「ほらカオリ」
「うん・・」

  さあ出かけよう きっと届くから
  髪を切って、夢をみがく 好きな空を、めざすために


ありがとうみんな。今までいっぱい愛してくれてありがとう。
両手に抱えきれないくらい、いっぱい、いっぱいの思い出をありがとう。
愛してるよ。みんなみんな、愛してるよ。

-------------さあ、出かけよう。


193 名前:@@@ 投稿日:2002/05/22(水) 18:56

 あのあと、みんなでたくさんたくさん歌をうたって、圭織の卒業式
は終わった。

 次の日、ひさびさのカメラの前で、圭織は堂々とした姿で卒業会見を
した。やっぱりその会見で、みんな涙してしまったけれど、圭織にも、
みんなにも、輝きがあった。その輝きは、周りにも伝わったらしく、
新聞でもニュースでも大きく取り上げられていた。
圭織は、モーニング娘。としての最後の仕事を、見事にこなしたの
だった。
 


194 名前:@@@ 投稿日:2002/05/22(水) 19:26
------------------------------------------------------------
圭織が卒業してから、一ヶ月が経った。
この一ヶ月、これからの圭織の活動の方針を決めていくためと、ソロ
活動するための充電期間として、圭織は表に出ていない。


「そろそろ出番だよ、行かなくちゃ」
皆が次々と楽屋を出て行く中、机の上に置かれた携帯の着信音が鳴り、
一人、踏みとどまった。

 『Eメール受信あり』
---カオリのソロのデビュー曲発売が決定しました。
  明日から、本格的な活動開始!

「カオリ・・・・・・」
頑張っているカオリの姿が目に浮かぶようだ。口元がほころぶ。

「あたしも頑張らなきゃ、な」



行かなくちゃ。仲間が待っている。

「なっちぃ!早く!」
「はーい」

仲間がいれば、永遠に光を見つづけることができる。どんな道を歩んで
行っても、旅立って行っても、あなたが仲間で居続けることには
変わりないよ。あなたを見てる。あたしを見ていてね。

ずっと、終わりない光を目指していけるように。




                           終わり


195 名前:@@@ 投稿日:2002/05/22(水) 19:27
-------------------------


196 名前:@@@ 投稿日:2002/05/22(水) 19:37
ええと、これで、「りーだー」は終わりです。
この話を書き始めたのは、何となく弱った飯田さんが書いてみたく
なったからなので、先のことも何も考えていなくて、正直ちゃんと
終わらせられるとも思っていませんでした。だからあんま人気のない
板にコソコソ書こうと思ったわけで。

でもこんなめちゃくちゃな話に応援レスを下さったり、読んでくださったり
する人がいてくれたおかげで、なんとか最後までたどりつきました。

先に言った通り書き始めた当初「先のことは何も考えてなかった」ので、
かなり苦戦しながら書き進めていって、見苦しいところばかりですが、
それにおつきあいしていただいて本当に感謝してますです。

ラストも皆さんのご期待にそえるようなものに上がらなかったし、
自分の力の無さにため息です。本当に、読者さんには感謝しています。
長いことありがとうございました。





197 名前:177 投稿日:2002/05/22(水) 22:36
完結おめでとうございます 足かけ7ヶ月間お疲れ様でした
一言、よかったです!
偶然にもこの小説に出会えたこと、感謝しています




198 名前:名無し娘。 投稿日:2002/05/23(木) 13:00
おめでとうございます。
どうやって、ここを見つけたのか忘れちゃったけど、
ホント感動させてもらいました。いい小説でした。

また、始めるときはここで知らせて頂けるとうれしいです。


199 名前:@@@ 投稿日:2002/05/23(木) 19:15
ありがとうございます。。。
自分もどうやってこの板を見つけたのか忘れましたが(爆)
偶然にもこの板を見つけて書き始め、偶然に見つけてくれた方に読んでいただけて、
その偶然に感謝。 

また、どこかで小説を書くかもしれません。その時は今よりかは上手くなってたら
いいなと思います。その時はここでお知らせしますね。てか多分ここで書きそうですね


200 名前:名無し娘。 投稿日:2002/06/01(土) 11:46
今更ですが、御脱稿おめでとうございました。
紹介系のスレで知ったとき以来、
毎回胃の痛くなるおもいがありつつ、
更新を楽しませていただきました。
次作も期待(プレッシャーにならない程度に)してますので、
どうぞ思案をめぐらせてください。


201 名前:中澤 投稿日:2002/06/02(日) 01:22
念のため言うとくけど
うちの名前は裕子やでぇ。


202 名前:@@@ 投稿日:2002/06/02(日) 08:19
久々に来て見ればレスが増えている(嬉)

>200
胃の痛くなるようなところは自分が完全に自分の世界に入って酔ってた
とこですね(笑)次はまたいつか書くと思います。何にも考えてないですが
ふといきなり書きたい衝動にかられて書くかも知れないです。
あ、カップリング小説とかでもいいなぁ。。。。。。

>201
う、うんごめんね・・・わかってるんだけどいっぺん間違って苗字で
表記しちゃったからそのままつらつらとさぁ・・。ほんとは皆名前で
統一しようと思ってたんだけどさぁ・・・。ごっごめんねほんと・・



203 名前:n 投稿日:2002/06/05(水) 18:29
aa


204 名前:名無し娘。 投稿日:2002/06/21(金) 18:03
そろそろ、新作の構想はできましたでしょうか?
と言ってみたりして・・


名前: E-mail(省略可)

read.cgi ver4.13 (2001/7/2)